とんでも腐敵☆パートナー
「なぁなぁ拝島。またグリコちゃん達誘ってどっか行けねぇかな?」
 
 俺達の前で足を止めると、高地は近くの椅子を引き寄せて俺達に向かい合う形で座った。椅子に対して座り方が真逆だが。
 
「栗子ちゃんをだしに使うのはもう止めなよ。直接祥子ちゃんを誘えばいいじゃん」
 
「だって二人きりのお出かけは絶対承諾してくれねぇんだもん。それに、グリコちゃんの連絡先しか知らない。祥子ちゃん、教えてくれないの……」
 
 くすん、といった感じにこうべを垂れる高地。まだ立倉のことを諦めてなかったのか。
 
「栗子ちゃんもそうそう暇じゃないと思うよ。今日からバイト始めるそうだし」
 
 ん?
 
 拝島の言葉にひっかかりを感じて、俺は眉をひそめた。
 
 やけにグリコ情報に詳しくないか?
 
「今日、グリコに会ったのか?」
 
 俺は奴の姿を見なかったんだが。いつ拝島はその話を聞いたのだろう。
 
「ううん。会ってないけど、携帯にメールで来たんだ。ここの近くのファーストフード店でバイト始めるから、是非食べに来て欲しいって」
 
 メール? グリコの奴、勝手に拝島とメール交換してるのか?
 
 あいつ、いつのまに……。
 
「おいおい、拝島ぁ。グリコちゃんと結構親密なお付き合いしてるじゃん。こないだも二人一緒だったし、あ~やしぃ~なぁ~。なんならダブルデートにするか?」
 
「ちょっ! 違うよっ。あれは栗子ちゃんがもし見つかったら話がこじれるかと思って、心配だからついて行ったんだよっ!」
 
 ぴくっ
 
 口の端が引き攣るのを感じた。
 
「こないだ……って、何かあったのか?」
 
 なるべく表情を和らげて訊く。
 
 途端、びくん、と拝島の肩が跳ねた。
 
「う、うん、高地と祥子ちゃんのデートがあっただろ? 栗子ちゃんが橋渡しした……あれに、栗子ちゃんとついて行ったんだ」
 
 ほう。
 
 それは初耳だ。
 
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