とんでも腐敵☆パートナー
「ネタはあがってんのよっ! ここな章くんを傷つけて、あげくにポイ捨て! やり逃げ御免! 人非人にもホドがあるわぁぁ~~っ!!」
 
「なっ! なんでお前がそれをっ」
 
 靴を脱ぎ、ずかずかと部屋にあがる。つられて朽木さんは後退し、廊下の端、リビングの手前で足を止めた。
 
「章くんはここんとこずっとね、拝島さんと朽木さんを陰ながら見てたんだよっ! すんごい苦しそうな顔で見てたんだよっ! 今日だって拝島さんに――全部、朽木さんのせいなんだからねっ!」
 
「――っ。本当か、章?」
 
 朽木さんの目が章くんに向けられる。
 
「あ……ぼ、僕……」
 
 萎縮した声がか細く震えた。朽木さんに嫌われるのが怖い? そんなのは認めない。
 
 背後をくるっと振り返ったあたしは章くんの手を取り玄関から引っ張り上げた。
 
「言うんだよ、章くん! この人でなし! 冷徹男! 僕の純潔を返せ! てゆーかあたしの自転車のブレーキちょっと曲がったんだけど、修理代よこせっ!」
 
「待て。最後のはお前の要求だろうがっ」
 
「ついでなんで上乗せしてみた! さ、章くん! 敵は熱で弱ってる! 今がチャンスよ!」
 
「えっ。チャンスって……」
 
「蹴るなり殴るなり押し倒すなり。たまには攻めに転じてみるとか! 大丈夫! あたしがしっかりビデオに撮っとく!」
 
「何を言ってるんだお前はっ!」
 
 スコーンッと頭に衝撃が走った。
 
 ど、どこから灰皿が……。しかもアルミ製。ナイスタイミングであたしに投げつけたのか。やるな朽木さん。
 
「アタタタ……。と、とにかく章くん……言いたいことは、全部言わなきゃダメだよ」
 
 振り返り、涙目で章くんに伝える。
 
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