天使はワガママに決まってる

しまった、と思ったときにはもう遅くて
迷子になったことと、周囲の環境を自覚した途端
ずっと雨に濡れていたせいか、突然体に寒さが増してきて
とりあえず雨をしのぐために、
鬱蒼とした橋の下にうずくまっているのだ。


私は正直、自分でも驚くほどの絶望感を味わっていた。


エルのあの一言で
ここまでやる気がなくなって、
動くことも考えることも辛くなるなんて……

たかが、自分の作ったロボットに
裏切られただけなのに。

裏切られたというよりも、
少しだけ自分から彼が遠ざかっただけ。
それだけなのに、今――とてつもなく辛い。

こんなこと予想外だ。


「………。」


湿った地面に放り出していた両足を、
抱えるようにして座る。

その膝に顔をうずめれば
いつか、およそ三ヶ月前の孤独だった
誕生日のことが蘇ってくるようだった。


「うっ……うぅ…」


あの日もたった一人の家で
こうやってソファにうずくまって
膝に顔を埋めて
思いっきり泣いた。


やっぱり、私はエルのことが好きだ――


今さら余計に自覚して、
エルのことを愛しく思ったって
彼の中の私は、ただの”家族”でしかない。

これ以上の感情なんて、
ロボットのエルにあるわけない。


でも、永遠の片思いでもいい。
従兄弟じゃなくて、特別な家族でいたい。


この濁流のような感情から逃れたくて、
私は知らない間に目を閉じ
冷たいコンクリートに寄りかかるようにして
いつしか眠りについていた――
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