天使はワガママに決まってる
「寝て……たんだ…。」
ガリガリと頭を掻き毟りながら、
周囲を見渡せば
橋から届く鮮やかな光で、
川がキラキラと反射し、輝いている。
雨はまだ降り続いているが、
もうほとんど霧のような状態になっていた。
濁った月が川に映る――夜。
私はかなり深い眠りに就いていたようだ。
「フゥ……。」
……帰ろうにも帰り道が分からない。
よくもまぁ意識朦朧と
こんな見知らぬ土地に来れたものだと
自分自身に呆れる。
再度地面に視線を落として、
ボーッと空虚の世界に浸る。
もう考えることもしんどくて、
寒さに体が震えているのも気が付かなかった。
ただ頭の中では、エルの言葉だけがフラッシュバックする。
「ほんと……中毒だよね…。」
そう呟いて、自嘲する。
私は震える自分の肩を抱いた。
”せなっ…!”
ふいに聞こえた、エルの声。
その響きさえ半日前なのに
とてつもなく懐かしく感じる。
「エル……?」
また睡魔が襲って、
私は無意識に目をゆっくりと瞑った。
そのときも、エルが私を呼ぶ声が
幾度となく聞こえてきて
少しの間だけ、幸せに浸った。
「大好き…だよ……。」
この意識を手放そうとした
その瞬間だった
「…な……っせな……」
「せな!!!」
今度は何故かとてもリアルに
彼の声が聞こえたような気がした。