天使はワガママに決まってる
足の部品が、まるで悲鳴を上げるように
ギッギッと軋む音がする。
そんなことお構いなしに、
僕は雨に濡れた土手の道を走る。
霧雨のカーテンの中に、彼女はいた。
「瀬那…!」
バラバラに生えた草むらをかきわけ、
橋の下でうずくまる瀬那の目の前へ向かう。
もう何度目になるか分からない彼女の名前を呟くと、
瀬那はゆっくりとその顔を上げた。
「……エル…。」
泣き腫らした目。
雨に濡れて、しんなりとした髪。
痛々しいほどにボロボロの彼女を見て
初めて僕の中に罪悪感が芽生えた。
自分のせいかと思うと、胸が苦しい。
「ごめ…っ、瀬那…!」
思わず僕は瀬那に抱きついた。
瀬那は驚いたように肩を揺らし、
苦しいと抵抗していたが
しばらくして大人しくなった。
「ごめん、ごめん…
僕のせいだよね。ごめんね…!」
謝ることしかできない。
何が悪かったのか分からない。
でも瀬那が傷ついたことに変わりは無いのだから
僕はただ自分を叱咤した。
瀬那はただ呆然と、
僕を抱きしめ返すこともなく
僕の謝罪を聞いているだけだった。