天使はワガママに決まってる

エルが、追いかけて来てくれた。
迷子の私を見つけてくれた。


それだけで私は、心の底から嬉しくて
彼の声が聞こえた瞬間、
本当に全身の力が抜けるほど安心した。


「……エル…。」


俯いていた顔を上げると、
そこには愛しい彼の姿。

息を切らすことは無いが、
ぐっしょりと濡れたその体から
この雨の中を探してくれていたんだと
容易に想像がついた。


(……エルだぁ…)


ごめん、という言葉とともに
エルが私に抱きつく。


驚きと戸惑いで、思わず苦しいと
彼を離そうとしたが、
エルはそれに応じないまま私を抱きしめ続けた。

体温こそ感じないけれど、
他人に抱きしめられているという温もりを感じる。


「ごめん、ごめんね……」


ずっとずっと、同じ体勢のまま
私に謝り続けるエル。

謝りたいのは、私の方なのに――


(ごめん。エル。)

(エルは何も悪くないのに。)


ただ些細なことで、私の感情が爆発しただけ。

きっとエルだから、理由さえ分からないまま
私に謝っているのだろう。


それでも謝ることができない、
素直になれない自分に、本当に腹が立った。


エルは何も悪くない。
謝らなければならないのは、私――…
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