lotlotlot2-ふたつの道-
暗かった森が白に染まった。
「何、あれ。」
「どうやら来たようじゃな。あれがフインズフー(白い矛)じゃ。」
飛んできたフインズフーは、グレンスマインスを見つけると一斉に襲いかかった。
「グレンスマインスの外骨格は、あらゆる攻撃をはじく。言術も例外ではない。しかし、フインズフーの矛だけは別じゃ。いとも簡単にやつの体を貫く。」
じいちゃんが話している間も、グレンスマインスの体には、どんどん穴が開いていく。それと同時に、格子を喰いちぎろうとする事は出来なくなっていった。

巨体が地面に横たわった。
それでも、フインズフーは止まらない。執拗に穴を穿ち続ける。
そこに倒れているのが、もう何かわからなくなっていた。

「さぁ、行くか。」
じいちゃんは、何事もなかったように歩き始めた。その時、じいちゃんの笑顔が、とても格好良く見えた。

「わかったよ、じいちゃん。」
突然現れた子供の頃の記憶。それはじいちゃんからのアドバイスのように思えた。
やるべき事が見えれば、あとは簡単だ。
「lot、lot。」
これでフインズフーが来るはずだ。

来ない。フインズフーの独特の羽音が聞こえてこない。
「こ、こんな事って。」
自分で言うのもあれだけど、僕はアドリブが出来ない。不測の事態にめっぽう弱い。
来ると思っていたフインズフーが来ない。これだけで、僕はかなり動揺していた。

それを悟ったのか、メルツがグレンスマインスに向かっていった。力強く飛び上がり、喉に噛みついた。
ちょうど骨格と骨格の間の肉に、メルツの小さな牙が突き刺さった。
「くうえええええ。」
奇怪な声をあげ苦しむ。しかし、それは一瞬だ。片手でメルツを鷲掴みにし、そのまま投げ捨てた。
メルツは壁に強く叩きつけられ、グッタリしてしまった。
「メルツッ。」
僕は叫んだ。

自分の体を傷つけられたのが、余程腹に据えかねたのか、リーグを片手で持ったままメルツに近づこうとしている。
「きゃるるるるる。」
涎を垂らし、メルツを喰らうんじゃないかと思えた。
どうにかしなきゃ、その思いばかりが空回りして、何もいい考えが浮かばない。それでもメルツを助けたかった。
すぐ側に、木の椅子がある。僕はそれを手に取り、グレンスマインスに投げつけた。
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