lotlotlot2-ふたつの道-
突然、鳥かごが揺れた。
「うわっ。」
格子を掴み、鳥かごを激しく揺らす者?・・・がいた。
それは鎧を着た人のようにも見えた。
「これがグレンスマインスじゃ。」
「何なの、この人・・・。」
「人?さぁ、人なのかのぉ。」

人の頭が左右に割れた。
「なっ。」
あまりに奇異な光景だ。刺激が強すぎる。
恐怖、不可解、気色悪さ。色んな感情が順番に、僕の中を循環する。
割れたように見えたのは口だったと思う。無数の長い牙が見える。
その牙を使い、格子を喰いちぎろうとした。
ガシャン、ガシャンと大きな音を立てる。たまらずじいちゃんに助けを求めた。
「じ、じいちゃん・・・。」
「何、大丈夫じゃ。決して入って来れん。でも、このままじゃ帰れないな・・・。」
じいちゃんは、あまりにも冷静だ。ビクビクしている自分が、恥ずかしく感じる。
「なぁ、イバーエ。こいつには、弱点があるって知ってるか?」
はじめて見たんだ。わかるわけはない。
「こいつの名前は黒い牙って意味なんだけどな・・・同じような名前で、白い矛と言われる生き物がおる。そいつが弱点なんじゃ。」
「でも、その白いなんとかって、ここにはいないじゃないでしょ?」

周りは静かな、そして暗い森が広がっているだけだ。生き物の気配なんてしない。

「じいちゃんが誰か覚えているか?言術使いじゃ。」
息を吸い込む。
「lot、lot。」
森中に力が、波紋のように行き渡る。
「じいちゃん、今のって何?」
いつもならlotと一回唱える。二回唱えるのは、はじめて聞いた。
「これは第二言じゃ。一回唱えるのが第一言。二回唱えるのは第二言。第二言は、第一言よりはるかに広い範囲に力を浸透させられるのじゃ。」
難しくてよくわからない。
「まぁ、見てればわかる。」
自信ありげに言った。
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