lotlotlot2-ふたつの道-
どこからともなく声が聞こえてくる
誰かの声が聞こえた。
「誰だ?」
周りを見回しても、漆黒の闇が広がるだけだから、無駄だった。
それでも男は、その声の主を探した。
「どこだ?どこにいる?」

男がこの暗闇に閉じこめられてから、どれくらい時間が経ったのかわからない。太陽とも月とも決別した今、時を知る術はない。ただ、無限とも思える時間を持て余していただけだ。
その時の流れの中で、はじめて誰かの声が聞こえた。だから、男は必死だった。
誰でも良かった。自分を助けてくれるのなら、誰でも良かった。

「お前、直系だな?」
声は頭の中に、直接語りかけてきているようだった。
「直系?いったい、何の事だ?」
普通ならあり得ない事でも、男は受け入れるだけの気持ちがあった。頭の中の声に答える。
「血だ。」
「血?それが何の直系だと言うんだ?」
「忘れてしまったか。まぁ、あれからしばらく時も経つ。仕方のない事か・・・。」
「忘れる?」
男には、まるで心当たりがない。何を言っているのか理解できない。
「今から数百年前の出来事だ。」
「数百年前だって。そんなのわかるわけがない。俺は生まれてない。」
「そうだったな。人間の寿命は・・・儚いものだったな。」
その声は、何かを懐古しているようにも聞こえた。
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