lotlotlot2-ふたつの道-
想う気持ち
自分の耳が壊れているのだと、リーグは思い込もうとした。
しかし、現実はそうではない。ズズカ夫人の言葉は、自分の父親が、大好きな友達を、殺したと言っている。
こんな事が信じられるだろうか。いや、信じられるはずもない。軽い眩暈がし、足下がふらついた。
「大丈夫かい?」
リーグの体を夫人はそっと支えた。
「今の話、本当なの?」
「残念ながら、本当らしいよ。村長が言ってたからね。」
「あいつが?」
リーグは村長が嫌いだった。あいつに何度となく難癖つけられて、何度となく怒られた。何もしていないのに、そこにいたからと言う理由だけで、言われもない罪を押しつけられてばかりだった。
だから、顔も見たくないくらいに大嫌いだった。
「じゃ、その話は嘘だね。おばさんも、あいつの言う事なんて信じちゃダメだ。」
「そうは言うけどさ、あんたのお父さんが捕まる時、うちの人もその場にいたんだよ。それを嘘だと言うのかい?」
夫人に他意はなかった。けど、それは自分の父親は、人殺しだと認めろと言われている気がした。
「なんで、そんな風に言うんだよ。人殺しなんて、親父がするわけないじゃないかっ!」
「ごめん、悪気はないんだよ。・・・ただね・・・。」
夫人は夫とリーグの板挟みになっていた。夫人としては、自分の夫を否定する気にもなれないし、リーグの心情も察してやりたかった。

「証明してみせるよ。親父が、親父が人殺しなんかじゃないって。」
リーグはズズカ夫人の家を飛び出した。
< 26 / 87 >

この作品をシェア

pagetop