lotlotlot2-ふたつの道-
じいちゃんに迷惑ばかりかけて・・・僕はダメな子だ
「lot。」
メルツは唱えた。するとどうだろう。見る見るうちに、イバーエの体の傷が癒えていく。イバーエは、それを黙ってみていた。自分の体を第三者を見るように見るのは、かなりの違和感だ。
「・・・。」
息を飲み、ただ凝視した。
「イバーエ・・・。」
声が聞こえた。それはじいちゃんのものではない。
「誰?」
イバーエは答えた。メルツは治癒に一生懸命で、イバーエの声に気がついていない。
「イバーエ・・・。」
声は窓の外から聞こえてくる。
<誰だろう・・・?>
無意識足が向いた。それに答えるかのように、声は大きくなった。
「イバーエ・・・おいで・・・。」
何か懐かしい感じがする声だ。
<この声って・・・。母さん・・・?>
死んでしまった母親の声。その声に激しく心が揺れた。
<母さん・・・母さん・・・母さん・・・。>
今にも駆け出しそうだ。いや、今のイバーエなら飛んでも行ける。心がそうしろと告げている。
その時だ。
「どこに行く!」
メルツが怒鳴った。それでもイバーエは気がつかなかった。
「もう呼ばれたか・・・。」
メルツはイバーエの前に立ち、もう一度叫んだ。
「イバーエ、目を覚ませ。」
やっと、気づいたようだ。
「じ、じいちゃん・・・。母さんが呼んでるんだ。どいて。」
「そんなものはいない。」
「いるよ。じいちゃんには、声が聞こえないの?」
「だから、それは幻なんだ。」
興奮しているせいで、メルツは激しく尻尾を振っている。
「そんな事ないよ。外から聞こえてくるよ。ほら、今も母さんの声が聞こえた。」
<完全に奪われているな・・・。>
「面倒くさい。しばらく、じっとしていろ。lot。」
すると、ゼリーのようなものが天井から、大量に垂れてきた。
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