lotlotlot2-ふたつの道-
せっかく
人は生まれる時、きっとこんな感じなのだろう。長いトンネルを抜け、あまりの光に目が眩む。今の僕もこうだった。
頭が痛い。寝不足の朝のような痛みだ。それでも意識だけはハッキリしていた。魂だった頃の記憶もハッキリしていた。
だから、じいちゃんを探した。
「じいちゃん?」
あまり大きな声は、頭に響くので出せない。それでも、何度か呼び続けた。
「じいちゃん?じいちゃん?」
返事はなかった。代わりに、尻尾を振ってやって来た。
「なんだよ、じいちゃん。もう犬の真似しなくていいんだぜ。」
今度はペロペロとイバーエの顔を舐めるだけだ。
「いつまでやっているんだよ。もういいって。」
しかし、何度言っても止めない。
僕は気がついた。
ここにメルツはいる。
けど、じいちゃんはここにいない。
涙が溢れ出た。
その涙をペロペロと、メルツは舐めてくれた。それがさらに悲しみを加速させた。僕の涙が・・・止まる事はなかった。
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