lotlotlot2-ふたつの道-
二度目もうまくいくはず
波紋の中から、手が現れた。ひとつやふたつではない。無数の手が、けけの事を掴む。
「う、うわっ。」
ふりほどいたそばから、次の手がけけを捕らえる。まさしく、いたちごっこだ。
「クソが・・・。ダ、ダンス。」
けけに向かって、雷が落ちてくる。数え切れない雷を浴び、さすがのけけも疲労が見えた。きっと、耐えきれなくなってきているのだろう。たまにフラつく。
それでも手はなくならない。雷に焼け焦がされても、すぐに次の手が波紋と共に現れる。どうする事も出来なかった。
「は、離せぇ。」
それが最期の言葉だった。無数の手に掴まれ、そのまま地中に引きずりこまれていった。
「・・・。」
あまりに壮絶な光景に、アイワイさんは声が出ない。
そして、それは僕も同じだった。ただ、別の理由でだ。
<じ、じいちゃん・・・?>
メルツが走ってくる。僕は待ちきれなくなり、メルツの元に走った。
「じいちゃん、大丈夫だったの?」
メルツは尻尾を振っているだけで、何も答えてくれない。
さっき聞こえたじいちゃんの声は幻だったのだろうか?だったら、あの言術はなんだったんだろう?色んな疑問が頭を過ぎった。
「イ、イバーエ。」
「じいちゃんっ!」
僕は喜んだ。
「大丈夫だったか?」
「あれは・・・やっぱり、じいちゃんだったんだね。ありがとう・・・。」
「気にするな。それより時間がない。要点だけ言うぞ。」
「時間がないって?」
時間がないと言うじいちゃんの言葉を無視し、僕は聞いた。
「お前を生き返らせたせいかも知れんが、この体と魂が安定せん。なので、もう一度純化を行ってみる。」
「魂が安定しない?」
僕にはピンと来なかった。
「とにかくだ。しばらくお前とこうして話をするのも・・・。」
そこでじいちゃんの声が掠れだした。
「大丈夫?じいちゃん、大丈夫?」
「・・・あいつとは・・・戦うな・・・お・・・前・・・リー・・・。」
「な、何、じいちゃん?」
じいちゃんの声は聞こえなくなった。代わりに、メルツのかわいい鳴き声が、僕の耳に届いてきた。
「・・・。」
じいちゃんの言いたかったのは、どんな事だったのだろう。僕にはわからなかった。
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