紅芳記
泣いてしまったことが悔しく恥ずかしく、言葉が続きません。
「沼田が、そんなにも辛いのか。」
殿に優しいお声で問われ、私は力なく頷きました。
「わしのせいか?
わしが、そなたに辛い思いをさせておるのか?」
何も、言葉が出てこない。
「それとも、夢や右京のおるためか?」
予想もしていなかった言葉に、バッと勢いよく顔を上げてしまいました。
「…そうか。」
「い、いえ!
違いまする…。」
側室を置くのも、武家の当主の立派な勤め。
血を繋がねばなりませぬ。
それに私自身、父上の側室の子であり、側室が嫌だということは私の母上を否定するも同じことなのではないでしょうか。