紅芳記

殿はろくから源之助を、私はユキからまんをそれぞれ受け取り、大殿の前に進みました。

「おお、可愛いのう。」

「源三郎、私にも早う源之助を見せて。」

「山手、そう急くでない。」

大殿は殿から源之助を受け取り、よしよし、とあやしていらっしゃいます。

「あなたばかりずるうございます!
姫、私にまんを。」

「はい、義母上様。」

私は義母上様にまんをお渡ししました。

「ふふ、源三郎に良く似ているわね。」

「む、山手、わしはまだまんを見てはおらぬぞ。」

「知りません。」

「…ほれ、源之助じゃ。」

「あら、源之助は母親に似たのね、源三郎には全然似ていないわ。」

「そうか?
鼻など源三郎そのものではないか。」

お二人は、まんと源之助を抱かれて、離そうとなさいません。

まさに、孫に溺愛といったご様子です。


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