紅芳記

若が産まれ、諸々の儀式が済んで数日後、殿に若のお披露目となりました。

殿のお世継ぎには既に夢殿のお産み遊ばした源之助がおりますゆえ、私は内心複雑な思いをしながら殿に御目通りすることになってしまいました。

「小松、大儀であった。
次郎の誕生は嬉しい限りじゃ。」

「はい。」

殿は心から嬉しい、と言うように終始笑顔でございます。

「さてさて、次郎の名を発表せねばな。」

殿は生まれた子の名を考えることが、何よりの楽しみだと以前仰せになっておりました。

まさの時は大殿に名付けを取られてしまって、それはもう落ち込んだそうでございます。

殿はそういうお可愛らしい一面もお持ちなのでございます。

「次郎の名は、源四郎と致す。」

殿がお見せくださった半紙には大きく源四郎と書いてありました。

「源四郎…」

「儂の幼名が源三郎、父上が源五郎だった故な、この子は源四郎がよいと思うたのじゃ。」

照れ臭そうに笑われる殿を見て、私の心には熱いものが込み上げて参りました。


次郎、源四郎の殿へのお披露目が終わったら、次は家臣団へのお披露目でございます。

我が沼田領の家臣団は殿を深く敬愛し、殿の妻である私にも気さくな良い家臣たちなのです。

殿おん自ら源四郎を抱いてお披露目をすると、それはもう充分すぎるほどのお祝いの言葉を貰いました。

それだけでなく、稲刈りを手伝った領民達からも心尽しの品が送られ、本当に良い方々に恵まれて生まれて来てくれて、ありがたい限りでございます。

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