紅芳記
源四郎の誕生での忙しさからも解放された頃、雪の中で新年を迎えました。
私は二十六、殿は三十二歳にまたひとつ歳を重ねました。
「殿、新年明けましておめでとうございまする。」
「うむ、目出度いことじゃ。
昨年には源四郎も生まれて、益々我が家は安泰となることであろう。」
「左様にございますね。」
慶長二年は、太閤殿下による二度目の朝鮮出兵が御座いましたが、我が真田家のみをとってみれば、いつもよりも平和な年でございました。
「今年も良い年にいたしましょう。」
「ああ、そうなるように励もうぞ。」
「はい。」
しかし、昨年の平和は嵐の前の静けさに過ぎなかったのでございます。
年が明けてより三月ばかりは、前の年と同様に平穏な日々でございました。
しかし、卯月に入り、再び浅間山が噴火。
以前の噴火よりも規模も大きく、我が領内にも被害が発生致しました。
その火山灰が祟ったのか、家老の矢沢頼綱が遂に床から頭の上がらないほどの病に倒れました。