紅芳記

これから、天下は一体どのようになって行くのでございましょうや。

太閤殿下のお世継ぎには淀の御方様がお産みになった秀頼君がいらっしゃいますが、上方におりました際に、秀頼君の御種は太閤殿下ではないなどという噂も耳に致しました。

何処かの大名家がそれに付け入ることはございますまいか。

さすればまたしても、戦乱の世に逆戻りでになってしまいます。

先が暗く、道が歪んでいくような心地がしてなりません。

「お世都、聞いておったか。」

私はまんを乳母と共に退がらせ、一人部屋の中で呟くようにくノ一の世都を呼びました。

世都は音もなく現れ、私の望みは既にわかっていることでしょう。

「は。しかと。」

「またそなたに頼みたい。
何もせずともよいゆえ、逐一上方の様子を知らせよ。」

「御心のままに。
しからば。」

世都は再び一切の音を立てることなく、部屋から出て行きました。


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