紅芳記
「これを。」
私は1番気に入った流水と鶴の描かれた反物を幸之助殿に手渡しました。
「かしこまりました。
それでは、私はこれにて失礼致しまする。」
と言い、幸之助殿は下がりました。
「おなみ、今しばらく私と世間話でもせぬか?」
久しぶりなので、おなみにはすぐに下がってほしくはありません。
「喜んで。」
人払いをし、おなみと2人きりでたくさん話しました。
特に、幸之助殿の話を。
私とて、もうすぐ嫁ぐ身です。
夫と添うとは如何なものか、知りたくて。