零の狼-新撰組零番隊-
入隊して日の浅い一七夜月さんは、六郎面さんの事は知らない。

故に接し方を間違えれば、取り返しのつかない事にもなりかねない。

合流場所に向かうまでの間、私は彼にその事を話して聞かせる。

口下手な私は、説明が苦手だ。

私のたどたどしい説明で、彼がどこまで理解したのかは分からない。

ただ。

「…血に魅せられたのかもな」

常に笑みを浮かべ、癇に障る表情の一七夜月さんが、このときばかりはやけに神妙な顔をしていた。

「『人を殺してみたかった』、『誰でも良かった』…近頃の殺しは、目的も動機も曖昧な、常人には理解に苦しむものばかりだが…それこそ幕末にだって、不可解な殺しをする奴はいた…肉を斬る感触、血の匂い、阿鼻叫喚…そんなものに悦楽を感じる連中がな」

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