零の狼-新撰組零番隊-
再び冷たい風が吹いた。

しばしの静寂。

その後。

「!」

私は一七夜月さんの目の前で小太刀を抜き、逆手持ちに構えた。

…何を説明の要があろうか。

私とて、威震志士は両親の仇だ。

幼い時分の事なので、犯人の姿は良く覚えていない。

ただ、両親が殺害された連続殺傷事件の際に、犯人は威震志士の一人だと、周りの大人達が騒いでいたのを聞いて、私の心にはその四文字が仇の名として刻み込まれた。

七種雲母という者が、私の両親を殺したのかどうかは知らない。

ただ、七種雲母もまた威震志士の一人なのだ。

ならば威震志士は全て私の両親の仇。

誰一人として、他人の手で仕留めさせる訳にはいかなかった。


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