零の狼-新撰組零番隊-
「短い付き合いだったな」

一七夜月さんもまた、人斬り包丁をスラリと抜く。

…風が空を覆っていた雲を払いのけ、満月が顔を覗かせる。

その月光を反射して、人斬り包丁が鋭く煌いた。

一七夜月さんの覚悟を示すかのように。

…この人との仕合は二度目。

しかし、邂逅の時の仕合とは訳が違う。

今回の仕合は、相手が同じ新撰組零番隊の隊士と認識していながら、互いに殺し合おうとしている。

否。

これは新撰組零番隊隊士としての仕合ではなく、一個人…春夏秋冬祝と一七夜月小次郎としての仕合。

「いくぜ」

一七夜月さんが刃を返した。

私も腰を落とし、低く構える。

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