甘いクスリ

 
「今日さぁ・・・

一人だから、テキスト
進めないのな。ってか、
都筑さんは、とっくに
クリアしてるけど。
何か弾きたい曲とか
あるの?」

遊ばせる訳にもいかず
愛想笑いを浮かべながら
問う。

引き攣ってるのが
自分でわかる。

「特にないです。
何か、私でも弾けそうなモノ
ありますか?」

いった都筑に、
手持ちの譜面をめくる。

適当に、一枚の譜面を
ピックアップした。

「これ、やってみる?」

全く、適当に選んでいた。
 
「弾いてもらって
いいですか?」

彼女は、譜面があまり
読めないのはしっていた。

軽い生返事をして 
譜面を手にして
固まった。




こっ・・・これはっ


よりによって、
二〜三年前に、イベントで
鷹尾とやったヤツぢゃねぇか

しかも


めっさ、
差つけられたヤツ


俺、サイテー

でもまあ、都筑が
見に来てたとは
限らない。

案外しらねーんぢゃね?
楽観的な俺の中の誰かと
あんだけ、惚れてんなら
見に行くじゃん?普通
また比べられんぢゃね?

って、悲観する俺が
無意味な葛藤を
繰り広げる。


「・・・先生?」
「ああ、うん・・・」

ヤバイ・・・

自ら、ピンチを
招いてしまった。



 
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