甘いクスリ
 
自動ドアをぬけて
エレベータのボタンを押す。


なんか手慣れてきた自分に
居心地が悪い・・・

うやむやなまま
事実上の関係に縺れ込んで
いるかのようで。

ため息混じりに、
壁面にコツンと額をあずけ
まぶたを閉じる。


都築にだって、
こんな中途半端な事は
よくないハズなんだ。

その前にやるべき事もあり
頭が混乱する。




「先生・・・?
なに・・・してる・・の?」


突然、耳に入った
覚えのある声に反応して
バッと、身体を
声のした方向へむけた。


「・・・おつかれ、ですか?
しばらく固まってましたけど。」

俺の少し前をヒョコヒョコ歩く
彼女が苦笑する。


・・・ええ。疲れましたよ。
気疲れしましたよ・・・


「どうぞ。」 


扉を開けて彼女が
部屋に入るよう促し

「お邪魔します。」

俺は、何ともいえず
苦い何かを飲み込み
革靴の紐をといた。



 
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