甘いクスリ
 

譜面を見るふりをして
何回か、チラチラと
都筑の様子をみた。


弾き始めてすぐ
息が止まったみたいに
目を見開いていた。

やっぱ

見に来てたんだなって
おもった。

 
ぐわっ・・

近づいてくる・・・
ラスト

鷹尾の弾いたパート


アイツの鮮烈な
アレンジが過ぎって、
手が止まりそうになる。

とにかく、
譜面通りに・・・
なんとか弾き切って
息をついた。


「先生・・・大丈夫?
途中で、息
とまってましたよ?」

都筑の声に
何で、こんな猛ダッシュ
したみたいになってんのか
初めてわかった。

「疲れた・・・」

やっぱ、俺
コイツといんの
苦手だ・・・

そう思った時だった。


「先生が弾くと
ブルースみたいですね。
何か、いい。

前に、ライブで
聞いたのも
よかったけど。

カッコいいですね。」


そう言って
邪気のない表情で笑った。


この時、初めて
彼女の顔を見たっていうか

笑顔が印象に残ったって
いうか・・・


照れてしまいそうで
何とか自分を取り繕ったけど
内心、うれしかった。

褒められて


子供じゃないけど


嬉しかった。



 
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