甘いクスリ
「琴子。笑って。」
びっくりした表情の彼女
俺は、繋いだ手に力を込める。
そうすれば
戸惑いながらも
彼女は口元を綻ばせ
俺を見上げる。
照れて、ほんのり
ピンク色になった頬
抱きしめたくなる気持ちを
無理矢理押さえ込む。
・・・ダメだ。
今晩あたり、
『お持ち帰り』
してしまいそうだ、俺。
「先生。ありがとう。
大丈夫だよ。
ちゃんと弾けるよ。」
ドレスのせいなのか
惚れたせいなのかか
俺を見上げる彼女が
かわいくて、かわいくて
どうしようもない。
「そうか。
じゃあ、最後だし、頑張ろう。」
彼女を立ち位置に残して
俺は、鷹尾の隣に
スタンバイした。