†神様の恋人†
ロベール隊長のもとへ行く途中、何度もジャンヌはいろんな人から話しかけられた。

8ケ月ほど前にもここに2度来ていたから、顔見知りになった人も多いらしく、ジャンヌも気さくに応える。

その中で、オルレアンの街のイギリス軍による包囲について深刻な様子で不安を口にする人々もいた。

「オルレアンが包囲されてしまってはもう終わりだよ……。あそこは南フランスへの拠点になる場所だからね。既にフランスの北部はほとんどイギリス軍の手に落ちているんだ」

嘆く人々にジャンヌは気丈に応える。

「大丈夫です。神は決してフランスを見捨てません。わたしは“神の声”を聞いたのです」

その言葉に対する彼らの反応は、一様に鈍いものだった。

あからさまに「“神の声”など聞こえるはずもない」という者もいた。

でもジャンヌは微笑むだけだ。

ジャンヌだって、13歳の時に初めてソレを聞いた時からずっと迷ってきたのだ。

一度決めた神への忠実な想いは、決して揺れることはない。

どんなに人々が彼女を変わり者扱いしようとも。



「ミシェル、今日は礼拝堂でお祈りをしてからロベール隊長のもとに行こう」

わたしたちはヴォークルール城の敷地内にある礼拝堂へと向かった。



< 110 / 147 >

この作品をシェア

pagetop