†神様の恋人†
「ミシェル」

カミーユが馬上のわたしに手を差し伸べてきた。

「…ありがとう」

カミーユの手をそっと握る。

その瞬間、彼はわたしを引き寄せると、抱き上げてストンと地面へ着地させた。

軽々と抱きあげられたわたしは、カミーユの腕の逞しさを感じてしまってドキドキする始末。

でもすぐにファビオの視線を感じて、カミーユの腕を離し、必死に胸の鼓動をおさえた。

ファビオはカミーユに足を掛けられたことを根にもっているのか、カミーユをじっと見たあと言った。

「そちらはエスコートがうまいらしい。さぞかし女性にモテるんだろうね?」

皮肉たっぷりの言葉に、カミーユは微笑交じりに答えた。

「さあね。モテることに興味はないからね」

ファビオはそれには何も答えずに踵を返すと修道院の中へと入っていった。

「ミシェル。ジャンヌにも言ったのか?ファビオに気をつけろって」

「ううん。まだ何も。どうして?」

「…いや、ファビオを警戒しているように見えて、ね」

カミーユはそれだけ言うと馬を引き始めた。

……カミーユは鋭い。

でもそれは少し違う。

ジャンヌはファビオを警戒しているわけではない。

……男性に触れられるのが、“怖い”んだ。






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