†神様の恋人†
2月のまだ冷たい水に、馬たちが勇猛果敢にも突き進んでいく。

伝令使を先頭に、馬たちは順調にセーヌの向こう岸へと進んでいた。

川幅は広く、一番水深のある河の真ん中へと入ってきたときには、水は馬の腹まで達していた。

冷たい水が、膝まで濡らし、その冷たさに体が凍える。

その時、ジャンヌの乗った馬が列をはみ出し、下流へと流れ始めた。

「ジャンヌ!!」

わたしが手を伸ばすのと同時に、ファビオがジャンヌに向かって手を伸ばした。

「お手を!!」

ファビオの手がジャンヌの腕に触れる。

嫌な予感がした。

ジャンヌの体が、明らかに拒絶反応を起こし、ファビオの手を避けようと体を傾けさせた。

「…ジャンヌ―――――――!!!」



ジャンヌの体が、セーヌの青にのまれていく。

目の前にいるのに、必死で手を伸ばしても届かないジャンヌの体。



……………神様っ―――――――!!!



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