†神様の恋人†
バシャーンという激しい水しぶきの音がした。

ジャンヌが水に落ちた音よりも激しいその音に、わたしたちは息を呑んだ。

また誰かが落ちたと思ったその瞬間、セーヌの水面に浮かぶ金色の髪に、わたしは悲鳴を上げた。

「……カミーユ―――――!!」

いつの間にか後ろから飛び込んだカミーユが、河に落ちたジャンヌの体を支えていた。

カミーユは冷たい水で硬くなったジャンヌの体を彼女が乗っていた馬の上に乗せると、自分もその上に飛び乗り、彼女を背中から支えながら馬の手綱を引いた。

「どう…どう…いい子だ。さぁ、前へ進むんだ」

すると冷たい水に怯えていた馬がゆっくりと向こう岸へ向かって進み始めた。

皆がほっと一息をついて、カミーユの馬について進む。

……よかった、ジャンヌ。

やっと岸にたどり着いたわたしたちはすぐに馬から飛び降りてジャンヌの元へ走った。

ジャンヌは馬から降ろされ、冷たくなった体を震えながら抱きしめていた。

カミーユがしゃがんでいるジャンヌの背中を叩き、飲んでしまった水を吐かせる。

「……げほっ…」

「大丈夫か?」

肩を抱くカミーユを目を見開いて見上げるジャンヌ。

カミーユはジャンヌの肩を抱いたまま、わたしを振り返った。

「ミシェル。着替えを持っていないか?このままじゃ凍え死んでしまう」





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