†神様の恋人†
「そ、それに…ジャンがなんと言ってもわたしはジャンヌと行く!!」

自分が真っ赤になっているのを感じ、必死で顔を背けた。

ジャンは、腕の力を一向に緩めない。

そして、拒否されて行き場のなくなった唇をわたしの頬に押し当てた。

「…ジャ…ン…?」

「いくら好きだって言っても、今は無駄みたいだね」

すっとジャンの腕の力が緩み、わたしは一気に彼の胸の中から飛び出た。

「ミシェルが一番大切なのは、ジャンヌだ。そうだろ?」

ジャンは少し寂しそうな笑顔で言った。

「そ、そうだけど…でもそんなの比べられないくらいわたしはここの家族が大好き。イザベル母さんもジャック父さんも、ジャックマン兄さん、ピエール兄さん、そしてジャンも!!」

ジャンは、羊たちに顔を向けながら呟くように言った。

「…オレは兄弟たちと一緒…か」

そして大きく伸びをするように両手を上げながら、空を見上げた。

「いいよ。ミシェルの好きにするといい。その代わり、オレにヴォークルールまで送らせてくれ。たまに仕事の合間を見つけて会いに行く。母さんたちにもちゃんと説明しとくよ。だけど、無理はしないで欲しい…」

「…ジャン!!ありがとう…!!」

「だけど!!」

……だけど…?

「…ミシェルのことは、諦めてないよ。ミシェルはまだ恋するには子供らしいからね」

ジャンは最後にそう言って笑った。





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