Libra ~揺れる乙女心~
オレンジ色のカーテンの中から校庭の方を見ると、夢の中にいるように眩しいんだ。
目を閉じても、明るいことがわかる。
バシ…!
ボス…!!
キャッチャーミットにボールが吸い込まれる音を聞きながら、目を閉じると目に浮かぶのはやっぱり隆介だった。
「おい!鈴子だろ?どうかしたの?」
返事もしない私に健太が近付いてきた。
今は、ここにいたいの。
このカーテンの中で失恋を噛みしめているんだから!!
「あっち行ってよ!」
近づいてきた健太の腕を振り払おうとした瞬間に、カーテンが舞い上がる。
思い切り泣き顔の私を
健太は、驚いたような顔で見た。
「ごめん!!」
健太は、顔を赤くして教室から飛び出した。
俊足な健太だけあって、あっという間に消えてしまって、私の声も届かない。
「ごめん!健太!!」
健太は心配して探してくれた。
他の誰も私の不在に気付かないのに。
健太は、練習の合間に私を探してくれたんだ。
それなのに、
手を振り払った。
あっち行って、なんてひどいことを言ってしまった。
その時の、一瞬見せた悲しい表情が目に焼き付いて離れなかった。