Libra ~揺れる乙女心~
「バス酔いするから一番後ろ~!」
マネージャー達は矛盾した理由で一番後ろを陣取った。
2台のバスで出発。俺と隆介と鈴子は、同じバス。
俺の隣は、キャッチャー。
ピッチングの組立について相談したいことがあると言われ、
バスの中で眠ることもできず、話し込んだ。
「ねぇ、隆介も食べる?」
聞こえないフリ。
気にしないように必死だった。
「隆介もメロン?」
選んだあめの味の話だと思う。
どうでもいいことなのに、腹が立つのはなぜ?
2時間の移動中、俺は何度聞いただろう。
愛する人が呼ぶ違う男の名前を…
好きなんだな、鈴子。
ごめんな。
俺がいるせいで、お前は好きな男に好きだと言うこともできないんだ。
ごめん。
俺が背中を押してあげられたらいいのに…
でも、
やっぱり無理だ。
俺、お前だけしか見えないから。