Libra ~揺れる乙女心~


「バス酔いするから一番後ろ~!」



マネージャー達は矛盾した理由で一番後ろを陣取った。


2台のバスで出発。俺と隆介と鈴子は、同じバス。



俺の隣は、キャッチャー。

ピッチングの組立について相談したいことがあると言われ、

バスの中で眠ることもできず、話し込んだ。




「ねぇ、隆介も食べる?」



聞こえないフリ。

気にしないように必死だった。




「隆介もメロン?」


選んだあめの味の話だと思う。



どうでもいいことなのに、腹が立つのはなぜ?



2時間の移動中、俺は何度聞いただろう。


愛する人が呼ぶ違う男の名前を…




好きなんだな、鈴子。

ごめんな。


俺がいるせいで、お前は好きな男に好きだと言うこともできないんだ。




ごめん。



俺が背中を押してあげられたらいいのに…



でも、

やっぱり無理だ。



俺、お前だけしか見えないから。






< 97 / 180 >

この作品をシェア

pagetop