君に溺死

俺はただ、逢いたいだけだよ。

弱い癖に。どうして俺の邪魔をするの?狩られたいの?死にたいの?

あァ、右手が赤く染まっていく。こんなに汚れた手じゃ、君の涙を拭えないじゃないか。



「ッ、死神の上条だ!」

「総長を呼べーッ!」



不快な騒音に、眉間に皺が寄る。降り止まない雨に手を翳すけれど、この手の赤はキレイに流れ落ちてくれない。

悲しい

悲しい

悲しい。



「…ハルカ、さん?」



鈴が鳴る様な愛しい声が、俺の鼓膜を震わせる。モノクロだった視界に鮮やかな色が戻ってきて。止まっていた心も、動き出した。

「俺」から「僕」に。

君はやっぱり僕の愛しい人。芽衣ちゃん、大好き。…死ぬ程、逢いたかった。
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