踏切の向こう側
1章
僕は、夢を見た。



夢の中の僕は電車の踏切の前で、ただ立っていた。


踏切の向こうには、自分と同じくらいの少年が、僕と同じように立っている。



僕は話しかけた。


『君は、誰?』

自分でもどうしてそんな質問をしたのかわからない。


現実で僕は、他人になんか話しかけたりしないからだ。


それが、年上であっても年下であっても、同級生であっても先生であっても、そんな奴等とは話そうとも思わない。





僕の質問に、彼は答えた。


『僕は…』


ところが電車が前を通過し、その騒音で彼の声はあっけなくかき消されてしまう。



電車が過ぎ去った後、再び踏切の向こうに目をやると、そこに彼の姿はなく、ただ変わらぬ景色だけがそこにあった。  



そんな夢だった。
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