約束
「まずは案内しておいて。私が案内するより顔見知りがそうしたほうがいいでしょう。よろしく」
姉は軽い足取りでリビングに戻っていく。すぐに扉が閉まる。私達は玄関に取り残されてしまっていた。
木原君が私の家に住む。寝食をともにするということ。そんなありえない話が起こりえるのだろうか。
「田崎さん?」
彼の言葉で我に返る。とりあえず彼を私の隣の部屋に案内しないといけない。それに自分で何かを考えることもできない状態で、言われたとおりに行動を起こすくらいしかできそうになかった。
靴を脱ぐと、玄関前にある階段を上っていく。とんとんと階段をあがる音がリズミカルに響く。冷静に装っているが、内面はいろいろな思いが渦巻いていた。姉の話を素直に受け入れられるわけもない。まず、その話が本当のことかさえも疑わしい。
足を止め、振り返る。木原君の顔が少し離れたところにあるのに気づき、目をそらしながら問いかけることにした。
「木原くんはいつ聞いたの?」
「昨日。君のお父さんが家にやってきて、我が家は部屋が余っているから是非にって」
木原くんも戸惑っていたのか、次第に彼の声が小さくなっていく。
昨夜、父親は家に遅くに帰宅した。ありえない話じゃない。それどころか、父親の性格を考えると、十分そんなことをしでかしそうだった。私の父親は悪い人間ではないが、暴走しやすい性格というか思い込みが激しいというか、それでいてかなりおせっかいで、能天気な人だ。
もし、木原君のお父さんがそのことで悩みでも相談して、家に住むということで解消されるなら、あっさりとそう言うだろう。
母親はおおらかといえば聞こえがいいが、基本的に大雑把だ。時々、何も考えていないんじゃないかと疑いたくなる。姉もそんな母親の性格をしっかりと受け継いでいた。
私はそんな彼らとは違っていて、小心者というか、あまり物事をプラス思考には考えられない性格をしていた。
姉は軽い足取りでリビングに戻っていく。すぐに扉が閉まる。私達は玄関に取り残されてしまっていた。
木原君が私の家に住む。寝食をともにするということ。そんなありえない話が起こりえるのだろうか。
「田崎さん?」
彼の言葉で我に返る。とりあえず彼を私の隣の部屋に案内しないといけない。それに自分で何かを考えることもできない状態で、言われたとおりに行動を起こすくらいしかできそうになかった。
靴を脱ぐと、玄関前にある階段を上っていく。とんとんと階段をあがる音がリズミカルに響く。冷静に装っているが、内面はいろいろな思いが渦巻いていた。姉の話を素直に受け入れられるわけもない。まず、その話が本当のことかさえも疑わしい。
足を止め、振り返る。木原君の顔が少し離れたところにあるのに気づき、目をそらしながら問いかけることにした。
「木原くんはいつ聞いたの?」
「昨日。君のお父さんが家にやってきて、我が家は部屋が余っているから是非にって」
木原くんも戸惑っていたのか、次第に彼の声が小さくなっていく。
昨夜、父親は家に遅くに帰宅した。ありえない話じゃない。それどころか、父親の性格を考えると、十分そんなことをしでかしそうだった。私の父親は悪い人間ではないが、暴走しやすい性格というか思い込みが激しいというか、それでいてかなりおせっかいで、能天気な人だ。
もし、木原君のお父さんがそのことで悩みでも相談して、家に住むということで解消されるなら、あっさりとそう言うだろう。
母親はおおらかといえば聞こえがいいが、基本的に大雑把だ。時々、何も考えていないんじゃないかと疑いたくなる。姉もそんな母親の性格をしっかりと受け継いでいた。
私はそんな彼らとは違っていて、小心者というか、あまり物事をプラス思考には考えられない性格をしていた。