約束
 二人のそんな会話が聞こえてきていた。

「どうせあの子は照れてるだけだって。気にしなくていいのよ」

「お姉ちゃん」

 私はこれ以上掻き乱さないで欲しいという気持ちから彼女を諌める。

「嫌なわけじゃないのでしょう?」

 恐らく帰宅したときに妹の気持ちを察していたのだろう。からかうような瞳で私を見ている。嫌なわけはない。そう口にするのが恥ずかしくて、私は返事ができずに、顔を背けた。

「本当に大丈夫ですから」
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