約束
 木原くんは私に助け舟を出すつもりでそう言ったみたいだが、その言葉を聞いて、私はまた墓穴を掘ってしまったことに気づく。

「でも木原くん家事とか全くできないのに一人暮らししたいと言っても無理じゃない。毎日外食やらコンビニの弁当でも食べる気?」

「練習したら大丈夫ですよ。多分」

 最後にそんな言葉をつけてしまうのが自信のなさだろう。

 二人の会話はまだ続いていた。強気な姉にどこか押されているようだった。

「でも木原くんもてそうだから、誰か料理してくれる人とかいそうだよね。やっぱり彼女いるんだよね」


 姉は私を見て、笑顔で言う。私と木原君の出方を伺っているようだった。

「いませんよ」

 木原君は平然とした様子で姉の言葉に答える。その爽やかな笑顔では本心を言っているのか分からない。

「本当に?」

「はい」
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