黒猫眠り姫〔上〕[完]

テストは嫌いじゃない。

自分の力を発揮できるし、勉強だけは

頑張ってた。

誰かに見てて欲しかったからどうにかして

勉強は出来る子でいたかった。

「鈴は頭いいからあまり勉強しなくて

も良さそうだね。」

湊だって頭いいくせに。

「でも、頑張る。」

それでもまだ希望は捨てたくないよ。

まだどこかで信じてる。

「鈴、いい子だね。」

頭を撫でる湊の手が優しくて泣けた。

「湊、私それ好き。」

そうやって湊に頭撫でられるのが

すごい好き。

「ん?」

「湊。」

夜道がこんなに綺麗に見えたのは

初めてだよ。

いつもは見向きもしない空が

霞んでて見えなかった。

「私、それ好きなの。」

だから、お願い。

不安でどうしようもない時

力を貸してね。

私がうまく言葉を吐き出せない時、

そうやって撫でてくれる?

「ふはっ。鈴、やっぱり猫みたいだね。」

湊がにっこり微笑んでる。

それがただ嬉しい。

私が湊に出来る恩返し。

「猫っぽい?」

髪が風に靡く。

「黒猫って感じだね。」

「不吉。」

「黒猫、可愛いと思うよ?」

黒猫って周りから呼ばれて

どうってことない。

ただ、不吉なヤツだと思われてる

のがすごい悲しかったりする。
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