ひなたぼっこ~先生の、隣~
高橋先生という人




高橋 一樹(たかはし かずき)28歳、独身。


担当教科は数学で、生徒指導も受け持っている。

厳しくもあり、生徒想いでもあるから人気は絶大。

先生を狙っている、女子生徒の噂は聞いたことがないけど、先生を好きな人はたくさんいると思う。


私が知っているのは、それだけー…



「…はぁ」

「何だよ、溜息なんかついて」
「!?」


頭上から声が聞こえ、見上げると、窓から顔だけを出した高橋先生がいた。

「中庭で座り込んでいる奴がいるから、気になって見に来た」
ニカッと笑いながら言うと、先生は窓をヒョイっと通り抜け泰葉の隣に座った。





「お前、いい場所知ってるなぁ」


季節は、5月。
暑くもなく、寒くもなく、心地良い気候。
ひなたぼっこをするには、ここの中庭がベストな場所だった。


「眠くなりそう…」

先生は眠たそうに、瞼を閉じた。

そよ風で先生の髪が微かに揺れ、太陽の光がぽかぽかと身体を包み込む。


「…先生、気持ちいい?」


泰葉の発言に、気持ちよさそうに閉じていた先生の瞼が開いた。


「なんか…いやらしく聞こえた」

「え!?そんなつもりじゃ…」

みるみるうちに、泰葉の顔は真っ赤になっていく。

「赤くなるなよ!俺が、やらしいこと言ったみたいじゃん!?」

「だって!…」


先生の言葉で、もっと赤くなってしまう。



「あー…もう」

先生は、自分の髪を掻き上げながら俯いた。



「…可愛すぎだろ?」


「え…?」


ボソッと言った、先生の言葉。

今、可愛いって…

「あぁ!そうだ。俺、今から出掛けなきゃいけなかったんだ!!」


急に大きな声を出しながら、先生は立ち上がった。


「じゃあな。午後の授業、遅れんなよ?」

背中を向け言うと、窓を軽やかに通り抜け校舎の中に入って行った。


「…」




真っ赤な顔をした泰葉はしばらくの間、そこから動けなかった。




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