私と彼の関係
　彼の視線が辺りを泳ぎ、私にたどり着く。


　その人を吸い寄せるような力ある瞳に見つめられ、より胸を高鳴らせていた。


　私は何も言えなくなり、顔を直視しているのも辛くなり、頭だけを下げることにした。


　彼はふっと目を細める。


　さっきまで冷たい印象を与えていた彼の周りの雰囲気が柔らかいものに変わる。


　言葉で表すとおかしいかもしないけど、まさしくそんな感じだったのだ。
「どうぞ」


　彼はそう優しい声色で告げると、家の中に入っていく。


　父親がまず先に入る。そして、母親がその後についていくんだろうと思った。


　その母親の足がぴたりと止まる。


「すごく綺麗な子ね」

　お母さんは私の耳元でそう囁く。


「うん」


　言っても言わなくてもいいような相槌だけど、そう思わず口にしていた。宮野渉は学校でも有名な人。一年の頃からそうだった。同じ学校でない私にもその噂が伝わってくる程だった。
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