王子様はカリスマホスト
王子様は吸血鬼?
「唯菜!」

その声に振り向く前に、がしっと首に腕を回され、目を白黒させる。

「よかった!心配したんだよ!もう大丈夫なの!?」

そう言ってあたしに抱きついてきたのは―――

「―――琴乃?」

矢吹琴乃。小学生からのあたしの幼馴染だ。

その和風な名前とは反して今時のギャルっ子だが、明るく素直で、一番のあたしの理解者だった。

「ご両親のお通夜に行っても、あんたの叔父さんにまだ眠ったままだって聞いて―――このまま、会えなくなっちゃうんじゃないかと思ったんだから」

目に涙をためながらそう言う琴乃の気持ちが嬉しくて、あたしは琴乃の手を握って笑って見せた。

「心配かけて、ごめん。もう大丈夫だから―――」

「うん、本当に良かった。で―――あんた今、どこにいるの?あの家、売却されちゃうんでしょ?」

「うん―――。叔父さんの家にいるよ。とりあえず、成人するまではいなさいって言われてる」

「そうなんだー。でもよかったね。近くに叔父さんいて。せっかく一緒の高校受かったんだもん」

そう言って笑う琴乃。

入学式には出られなかったけれど。

あたしの高校生活はこうして幕を開けた―――。
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