【短編】 ききたいこと

 1日目をなかなかの手応えで終えた私は、翌日のテストに備えて早く家に帰ろうと友達とのおしゃべりもそこそこに玄関へ向かった。
 靴を履き替え外に出る。と、

「―――佐々倉」

 不意に声をかけられ、心臓が飛び跳ねた。
 声の主は、振り返らずともわかった。

 ドキドキしながら振り向くとそこには、コンビニの袋を提げた先生がいた。

「……お昼、ですか?」

 予想外の出来事に頭が真っ白なり、なにを言えばいいのかわからなくなった私は、ぎくしゃくしながらそう尋ねた。頬が熱く、顔が上げられない。マフラーがあって助かった。

「ああ。昼休み食べ損ねちゃってな。佐々倉はもう帰るのか?」
「はい」

 聞こえたかどうかわからないくらい小さい声で返事をし、私は頷いた。
 さらにマフラーに顔が沈む。
 ますます頬が熱を帯びる。

 ……先生、近いです。しかも、鼻、赤いし。袋の中身、メロンパンだし。


(か、かわいい……!)

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