i want,

卒業




……………


卒業式は、雨だった。


あたしは晴れてようが雨だろうがどっちでも構わなかったけど、さと達は晴れる様に必死にてるてる坊主なんか作ったりしてた。

あたし自身のためじゃなく、そんなさと達のためにちょっとだけ晴れであることを祈った。


でも、やっぱり雨だった。


「桜、散っちゃったねぇ」

有希が車の窓から外を見ながら呟く。

「せっかくの卒業式なんに」
「でも咲いちょったんほんと少しじゃったじゃ。今から咲くいね」
「ちょっとでも咲いちょったら嬉しいじゃ」

まぁねぇ、曖昧な返事を返して、あたしも窓に視線をずらした。

大雨じゃなかった。
天気もそれ程悪いわけじゃない。
パラパラと小さく降る雨粒達は、あたしの代わりに泣いてるんじゃないかと思う。

卒業式に、感傷も何もなかった。

ただ少し、先生と離れるのが寂しかったくらい。

結局みんな同じ中学に行くんだし、何も変わらない。


あたしは必死に、そう言い聞かせていた。

そうして、現実から目をそらそうとしていたんだ。





真依の引っ越しが決まったのは、ほんの1ヶ月前のことだった。




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