i want,
とても普通の会話。それが今、自分の目の前で繰り広げられている事実に目を疑いたくなる。
少なくともこのクラスの女子と、こんな風に普通の会話が成り立つ関係では、もうないと確信していたから。
「ね、後で銭湯一緒に行こうや!」
「夜は花火もあるしね!楽しみじゃあ」
そう言ってあたしに笑顔を向ける二人。
固まったままのあたしは、それでも小さく頷いた。
それにまた、二人が微笑む。
こういうやりとりを、あたしはこの古巣の中で、もう随分していない様に思った。
実際していなかったのだ。
あの神楽が終わった、あの頃から。
一瞬胸の奥が苦しくなり、誤魔化す様にあたしも食器に手を伸ばした。
小学生の時のクラスメイト。彼女達と、こうして肩を並べて食器を拭く。
そんな現実が、まだあたしには残っていたのだ。
もう無くしてしまったと思っていた、戻れないと思っていた、思い出と同じ場所。
嬉しさや幸せとはまた少し違う様な甘酸っぱい気持ちを抱え、あたしは布巾を食器に滑らせる。
それでもやっぱり、頬が弛む自分がいた。
心の内側で、小さく思う。
…また、笑いあえるのかな。
移り変わっていく、この世界の中でも。