i want,
「…ほうけ、」
ヒカルが呟く。
自分から全部言ったくせに、ヒカルがそれを受け入れたことが苦しい。
止んでいた風が吹き始める。
二人色の違う髪を揺らしながら。
崩壊寸前の気持ちをもう一度抱え直して、あたしは心の隅で思った。
終わったんだ。
なにもかも。
思い出に浸るには辛すぎた。
それでも今、この場に居続けることはもっと辛かった。
多分この涙腺がもってくれるのも、あと数分だろうから。
ヒカルの顔を見ることが出来ないまま、あたしは泣かない様に願いながら、言った。
「…ばいばい」
…何て陳腐な言葉。
でも今、あたしからはそれしか言えない。
『さよなら』なんて言える程大人じゃないし、『またね』なんて言える程強くもない。
『ばいばい』が、精一杯だった。
視線を上げないまま、あたしは踵を返した。
多分もう、この渡り廊下に来ることはない。
授業をサボって階段を駆け上がることも、ココアとカフェオレで喧嘩をすることも、くだらない話を何時間もすることも。
もう二度と。
「…ヒカル、」
瞬間、風が止んだ。
足が止まった。
時間が、止まった。
「…離して?」