i want,
……………
校舎の中の人はまばらだった。上に行くに連れて、人影もなくなっていく。
卒業式が終わって時間は随分たっていた。多分みんな、校舎の外に出ているのだろう。
あたしの足音が長い階段に響く。追いかける様に鳴るそれは、あたしの心を急かす。
全て終わったと思っていた。
あの日、あの渡り廊下で、彼の腕を拒んでから。
でもどうしても、あたしの心は終わりを告げてくれなかった。
どれだけ忘れようとしても、どれだけ消し去ろうとしても、ふとした瞬間に堪らなく苦しくなる。
ただ、会いたくなる。
階段を昇りきって、足を止めた。響いていた足音も消える。
しんとした校舎。
心臓が、小さく速くなるのがわかる。
全てから卒業しなきゃいけない。
思い出からも、痛みからも。
そのために今、もう二度と来ないと思っていた場所へ向かう。
すっと空気を吸った。
手のひらを小さく握りしめる。
曲がり角を曲がった瞬間、春風があたしを包んだ。
懐かしい香りがしたような気が、した。