i want,


……………

入り口のドアに手をかけたら、ドアノブから既にがやがやしている雰囲気が伝わった。
あたしはゆっくりドアを開ける。隙間から懐かしい笑い声が聞こえた。

「あっ!あお来たぁ~!」

やっぱり一番最初に気付いたのは綾で、「久しぶり~っ」と飛び付いてきた。
あたしはよろけながら「久しぶり~っ!」と返す。

「ごめんね、遅くなって」
「えぇよ~!こっちこそもう始めちゃってた!あ、卓也あおの生ひとつ!」

「はいよー」と卓也が店員を呼ぶ。
その横顔や笑い声は何一つ変わっていなかった。

「あお元気だったぁ?いつぶり?一年?」
「それくらいかなぁ。冬は就活とかで帰ってないけぇね」

綾に促されて綾の隣に座る。
派手だった綾の髪の色は随分落ち着いていた。

「綾、大人っぽくなったね」
「ほんと!?ちょっと大人路線目指しちょるんよ~。今綾お店ちょっと大人向けじゃけぇ」
「お店変わったん?」
「うん、同じ系列じゃけどね」

短大を卒業してから、綾はアパレル関係の会社に就職した。
最初は綾っぽい派手なお店だったけど、今のお店は随分落ち着いているみたいだ。

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