【完】冷徹仮面王子と姫。
「きっとね…王子も、我慢してたと思う」



 分からなかった。


 我慢の意味が、分からなかったの。



「前はあたしもはぐらかして言わなかったけどね、きっと王子、怖かったんだと思うよ?」


「え?」



「一香が分かりやすい構造だったからあたしも、なんとなく見当がついたんだけどね?

きっと一香の前の王子は人前と違ったんだと思う。
自分でもそれが怖かったのよ」



 ……「あたしの前では」。


 そう。冷たかったのは相変わらずでも、時々見せてくれた笑顔が離れない。



「あたしも少し…怖くて。瀬能と付き合うことになった時。
でも瀬能が、そういうところも好きって……そう言ってくれたから」



 ―――幸せそう、としか思ってなかった。


 でも、そんな不安があったんだね。


 瀬能君はあーちゃんのことを、ちゃんと支えていたんだね。



 気持ちも何もかも、感じてばかりで。


 伝えることをしていなかったから、こうなってしまったのかもしれない。



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