【完】冷徹仮面王子と姫。

奪われた視線

 ―――それから、HRが終わって帰る時間となった。


 あーちゃんは、一緒に帰ろうかと声をかけてくれたけど。


 もう平気だからと言って、苦笑いを連れて断った。


 一人で駅までの帰り道を歩き出した、時。



「及川、さん……?」



 後ろからおずおずと声がかかる。


 振り返るとそこにいたのは、氷室君の今の「彼女」。


 …何か聞きたいことがあるのだという事だけは、気づいている。


 だけど、ねぇ。



「ひとつ聞きたいんだけどさ…」


「何?」



 新種の嫌がらせだろうかと思ってみたが、まず新種でない。


 話しかけられただけで、少しずつ湧き上がってくる黒い感情に、あたしは怒るのでなく泣きたくなった。



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